ルーキーズカレッジⓇも7年目。展開地域も増え、毎年少しずつブラッシュアップしていますが、今年度も各地で学びを介したたくさんの地域同期の繋がりが生まれました。
2023年度はコロナ禍も終わり、対面で臆することなくプログラムを実施ができるようなったので、新たにルーキーズカレッジⓇの学びを地域で実践するプログラム「フィールドスタディ」を企画しました。
今回は宇和島、宮古、塩尻の3地域で実施してきましたので、その様子と実施による成果、今後の可能性についてまとめてみました。
ルーキーズカレッジⓇとは?
地域に就職した新卒1年目~3年目程度の若手社会人を対象にした合同研修会、組織の垣根、民間行政などの立場を越え「地域同期」として繋がり学び合う場です。
一般的に行われているマナー講座のようなものではなく、社会人としての成長に必要な学びをテーマに、これからの時代に求められるキャリアデザイン、どんな職種にも有効なコミュニケーションスキル等を学び、関係性構築を通じて若手特有の悩みの解決を図ります。
自社に同期や年齢の近い先輩がいないような社員へのオンボーディングも目的であり、2017年にスタートし、これまでに6県7地域で実施してきました。
フィールドスタディのコンセプト
ルーキーズカレッジは「未来のための学びを、仲間とまちと」がコンセプトです。
地域同期という言葉から社内ではなく”地域で”繋がりをつくるということをポイントとしてきました。
スクール型の研修数時間だけではなかなか関係も深まりせんし、学生時代と同じ与えられるだけの受け身の学びばかりでは自律的に働き・学ぶ力は一向に育ちません。
フィールドスタディでは、地域の問題発見・課題解決を通して、問題発見・課題解決のための一連のプロセスを体験し、成果を上げるためのチームワークや自身の強みを理解しリーダーシップのあり方を意識してもらうことを目的としました。1年目で求められることは少ないかもしれませんが、今後のキャリアにおいても必ず役に立つはずです。
また、新入社員のなかには地元を離れてUターンしてくる方や、就職を機にはじめてやってくるIターンの方も多いです。特に地方都市では車移動が中心となるため、職場と家の往復となると商店街や公共施設、観光スポットを知らず当然そこで活躍されている人物(=プレーヤー)も分かりません。
フィールドスタディでは、ルーキーズカレッジで学んだコミュニケーションスキルの実践機会として、実際にまちへ出てもらってインタビューを地域に対する親近感を感じてもらうことも目的としました。
プログラムのはじまり
朝集まってもらってまずはプログラムの趣旨とゴール、1日の流れを説明。参加者も何をするか理解しないまま来ている方もいるようでした。
一日活動を共にするグループメンバーで自己紹介、一日の意気込みを伝えてあいます。3回目でようやく顔見知りもできたかというタイミングで緊張感が伝わってきます。
まずはプログラムのメインとなる問題発見・課題解決に必要な考え方と流れを解説。
ロジカルシンキング、デザインシンキング、システムシンキングのエッセンスを織り交ぜた
内容ですが、前提知識がない方でも趣旨を理解してもらえるよう工夫し、ワークシートに落とし込んで整理できるようにしています。社会人として2年目以降求めらえる姿勢についても伝えて話し合ってもらいます。
そして、一日のミッションを発表。参加者の皆さんは1日かけてテーマについて問題を発見し、課題解決のための提案をチームで考えてもらいます。
宇和島では観光・まちづくり、宮古では観光・福祉・社会教育・移住定住、塩尻は地域資源の活用発信を設定しました。
オリエンテーションとレクチャーを終え、いよいよ本番。
参加者たちは自分たちのテーマに関する情報を集めるべく、グループでフィールドワークに出発します。地域の施設を訪問、テーマに関してキーマンに話を聞きに行きます。
ここでこれまで学んできたコミュニケーションの基礎、インタビュースキルが活きるわけです。会場にもテーマに詳しい方、実践者のキーマンをお招きしインタビューを行いました。
インタビューから得られた情報を整理し、メンバーと話し合いながらワークシートに落とし込んでいきます。
熱意もって活動をしている方の話は刺激になった様子。いい話をたくさん聞けたからこそまとめるのが難しかったりします。この辺りからチームの結束力と集中力が高まってきました。
最終的にまとめてもらうプレゼンのポイントを解説するとワークタイム。プレゼン手法だけでなく、資料のまとめ方も学びとしているので提案が主観的で一方的な内容にならないよう主張することの根拠となる情報や事例の調べ方、話題の生成系AIの活用や二次情報の取り扱いの注意点なども伝えます。こうした情報リテラシーは重要ですが見過ごされやすいビジネススキルではないでしょうか。
プレゼンがまとまっていくにつれ参加者同士の距離も近づいていきます。笑い声が聞かれたり、お互いのグループを行き来しながら相談しているところも見受けられました。
学校や会社に管理される過ごし方ではなく、自分たちで自己裁量を持ち、自ら考え動くタイムマネジメントを経験する機会にもなっていたようです。
最後の詰めの前に事務局よりフィードバックタイム。足りない視点やプレゼンのまとめ方についてアドバイスを行います。ラストスパートも、限られた時間でできる限りのものを作ろうと真剣に取り組んでいました。
プレゼン資料を提出してもらって、いよいよプレゼンタイム。1グループ8分程度で発表、地域のキーマンや所属先の経営者・管理職の方にゲストにお越しいただき講評をいただきます。
一連のプロセスを体験することを目的とした新人研修ですので、スライドのクオリティは問いません。それよりもどのようなプロセスでその提案に行き着いたのかと、提案の内容についてゲスト視点でフィードバックをいただきながら対話をしてもらいました。
プレゼンを終えたら最後の振り返りワークです。
あっという間に過ぎていった一日を振り返り、学びと気づきを対話しながらまとめていきます。
ここまで過ごしてきた相手だからこそ、自身の行動を顧みて素直に至らなさを言葉にできたり、相手に感謝を伝えあえるような関係が生まれてきます。
やりっぱなしでは学びにならないこと、自分一人よりも他者と対話した方が学びは深まることを実感したことでしょう。リフレクションの意義を身をもって知るということもねらいです。
参加者は業種も最終学歴も異なり、中途入社で参加した社会人歴が数年ある新人もいました。こうした背景の違いは時に協力を難しくさせますが、だからこそ多様な他者と協働する価値を実感できたり、職場で発揮してこなかったリーダーシップが発露されたりするものです。
自分の得意や強み、課題や今後の伸びしろと向き合った1日。達成感を感じられる表情を見せていました。1日本当にお疲れ様でした。
「本気で生きている人」に触れることが当事者意識を生む
終了後、参加前と比べて地域に対する意識が変わったかをアンケートで聞いてみましたが、このような結果となりました。
宇和島の参加者の回答ですが、他の地域でも多少の差はあれど似たような回答を書いてくれる方が複数いました。
自分の先入観や固定観念を覆すような生き方をしている人、何もないと思っていたまちで本気で生きている人との出会いが彼らにとって刺激になったと思いますが、こうした出会いに動機づけられ行動や価値観が変容することを感染動機といいます。
感染動機は先達の生き様に魅了され、病気に感染するかのように感化されられる現象です。「あの人みたいになりたい」、「あのような域まで到達したい」といった思いが動機付けとなり、その道に進む行動になります。
ロールモデルとの出会いとも表現できますが、しばしば芸や職人の世界で起こり得る現象ですね。
今回のフィールドスタディのキーマンとの出会いも、地域に対する向き合い方が変わるきっかけとなり、自ら行動し社会や周囲に働きかける将来のプレイヤーが輩出される可能性も期待できます。
若者が地域に関心がないという話も、単にその地域で懸命に生きる人の生き様を知らないだけでなのかもしれません。
今後さらにブラッシュアップを重ね、フィールドスタディを実施していきたいと思います。
当社はただ知識を伝達するだけの研修会社ではありませんので、新入社員の学びの機会をデザインすると同時に、地域の人材育成機能を開発し、関わったすべての人に学びがあるような仕組み・仕掛けを引き続きつくっていきます。
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